さまようオオカミたちの blog

つれづれなるままにさまようオオカミたちのみえるモノ

90年代 某日 あるオオカミのノート

Note

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あなたの机のノートが風に誘われている。

 

某年11月28日(木)

 新宿駅南口

階段の手すりを食卓にして ゆで卵の夕食をとる労働者

現実が目の前で叫んでいる。

 

湾岸あたりは五度は気温が低い 海からの風もつめたい

天王洲橋からゆっくりと昇る大きな赤い月をみる

こんな月 あなたと一緒にみていたい

もうだいぶ欠けてきてるんだよ

月に見守られている

 

落ち葉にうずくまってる仔猫

誰かがあげたカンヅメに向かって祈るように丸くなる

柔らかかった毛はすっかり灰色 優しくなめてくれる親はいない

早くおおきくなりな 立派な野良になるんだよ

 ネコが丸くなる季節 丸ネコ季節

 しんみり あなたのいない夜

 

 

某年11月29日(金)

朝 曇った空 なぜだろう

いつもあの雲の中に吸い込まれそうになる 吸い込まれたい気がする

憧れ 恐怖 つかぬこの気持

 

歩道橋から落としてしまったペンのキャップ

とっくにひかれてると思ったのに 下に降りてみると ころがっていた

信号が変わったら取りに行こう あっ

みつけたら 瞬間バイクにひかれて砕け散る

 

市ヶ谷 外堀の水鳥 流れるように十羽がぷっかり浮かんでいる

ぼんやりしたら 手品のように一瞬で一羽もいなくなる

みていて そうじっとみていて

ぽっかり水中から浮いてくる 朝ごはんかな 遊んでるのかな

たのしそう あなたにおしえてあげる

 

 あなたはいったい どこで何をしているの

 ねぇやさしくキスして いっぱいキスして

 あなたも あなたのキスも だいすき

 

 

ノートは閉じなければならない

風がふいていても